咎人達の輪舞(3)  



 屋根から滑り降りたナギは、窓枠と木の枝を器用に伝って庭に降り立っていた。

「いたぞ、泥棒だっ!」
「捕まえろっ!」

 声が響いて、護衛が周囲に集まってくる。ごつくて目つきの悪い、多分一時的な雇われ人ばかりだろう。
 それにしても。

 目の前に居た男が振るった大きな刀をしゃがんで避け、足を引っ掛けようとするが、重すぎる。後方に跳躍し、右手で引き抜いた短刀で振り下ろされた刀を受け止め、横に逃げる。男の後ろに回ってその足を蹴り飛ばし、その勢いで横から襲ってきた男の腹に回し蹴りを放った。大したダメージはないようだが、一瞬だけ動きを止められる。
 ジャンは……まだだ、後倍ぐらい相手してやらないとダメそうだ。

 しかし、辛いな。

 五人、六人ほどの護衛が援助にやって来た。あまり長い時間ここに居れば、人に囲まれて出れなくなるかもしれない。
 ちぇっと舌打ちをしながら、振り下ろされた刀を横に避けてその手を短剣で傷つける。横から突っ込んできた男は後ろに跳躍して避け、身を沈めて刀を避けると同時にぽんと右ブーツの踵辺りを押した。
 そのまま両手を地に付けて、護衛の足の守られていないところを狙って蹴りを放つ。ブーツのつま先には、先程飛び出させた小刀。引っかかったそれが数人の男の足を傷つけて、鮮血を飛ばす。
 大した傷ではないだろうが、それでも動きに支障は出る。足ならば、尚更だ。
 更に数人の攻撃を避けて、もう一度屋根の辺りを見る。
 流石に、もうジャンは居なくなったようだ。
 ほうっと安心して息をつくと同時に、

「こんの、ガキがっ!」

 がっと、背中に衝撃。
 思わず前のめりに倒れかけると同時に、今度は腹に蹴りを入れられた。後ろに吹き飛んで壁に、いや木の幹ぶつかる。
 ごほごほと堰を繰り返して、息を整え前を見て。

「……やべ……っ」

 慌てて左手でも短刀を引き抜いて、両剣で振り下ろされた刀を受け止める。

「こんのっ!」

 必死でその刀を押し返して、即座に力を抜いて横に逃げた。
 短刀を片方しまって、右手だけで刀を持ち、構える。周囲にいるのは六人。二人は先程足を傷つけた人間で、全員が刀を持っていた。

 ……さっさと逃げるか。

 微かに身体を動かすと、先程背中をぶつけたのが悪かったのか、その辺りから痛みが走った。
 微かに、動きが鈍る。
 しかし、それは無視。
 右足を微かに引いて、周囲を見回す。じりっと、ナギを囲む男たちの輪が狭まった。
 行くっ!
 自分で自分に気合を入れると同時に、前方へ跳躍。ぐぃっと身体を沈めて短刀を振るい、男たちを牽制。その脇をすり抜けると同時に左足を軸に身体を回し、右足で男たちを軽く傷つける。

「ガキがっ!」

 横から振り下ろされてきた刀を後方に跳躍して逃げ、

「……っ」

 左から振り下ろされた刀を完全に避けきれず、左腕で防いだ。その腕を振るようにして刀の進路を変え、男に急接近してその二の腕に右手の短刀を突き刺して、抜く。
 そして直ぐにその脇を滑りぬけて、逃げる。
 右手の短刀は持ったままなので左腕の傷は塞げないが、大丈夫、そんなに深くない。と思う。
 後ろから男たちが追いかけてくるが、純粋な速さならば引けは取らない。長い時間を走れば体力的に劣るナギは追いつかれるかもしれないが、大丈夫。

「……あったっ」

 頭の中に入っていた地図の通り、壁のすぐ脇に生えている木の所に駆け寄って、その勢いのまま跳躍。痛みを無視して左腕で木の枝を掴み、更に上へ。
 枝に飛び乗って直ぐに壁に飛び移り、ひょいと反対側へと飛び降りた。
 そして、ようやく短刀をしまい左腕の傷口を押さえる。弾む息を無理矢理押さえ込みながら、もう一度、足を叱咤して走りだす。

 もう少し、ここから離れなければ。

 『鷹目』と反対方向に走って、途中で止血をしてから今度は『鷹目』に向かう。こういう仕事は、絶対にばれるなとホークスにはきつく言われているのだ。
 コレぐらいの細工は、当然の事だった。

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