愚者の呟き(1)  



 だって、しょうがないじゃないか。

 情が移ってしまいそうだった。
 最初はそんなつもりはなかったのに、一人きりだった俺は、他の人に、自分と一緒に居てくれるという他の人に、情が移ってしまいそうだったんだ。

 だから、崩そうとした。
 突き崩すしかないと思った。

 俺は弱い。弱くて弱くてしょうがないから、一人で居たいんだ。あの時だってそうだった。
 俺は、自分の弱さのせいで家族を殺した。

 誰も言ってくれなかった。
 お前のせいだ。
 お前のせいで、俺は、私は、僕たちは死んでしまうんだ。さあ責任を取れ。一緒に死ぬが良い。何故生きている。何故お前だけが。

 恨まれた方がマシだ。
 俺の咎を、誰かに責めて貰いたかった。

 けれど、それはなされなかった。
 代わりに俺に訪れたのは、助けの手だった。

 お前は一人なのか。ならば、一緒に行こう。

 俺は弱かった。
 一人で居る事が出来ない。
 それなのに他の人に迷惑をかける。分かっているのに、それが分かっているのに、優しくされると一人で居る事が出来なくなる。
 俺は弱い。
 気持ち悪いほど、泣きたくなるほど、突き放したくなるほどに、弱い。
 どうしようもなく、救われないほどに。

 だから、突き崩そうとした。

 この情が移ってしまったら、俺が本当に他の人を大切だと思うようになってしまったら。
 死んでしまう。殺してしまう。
 それならば、離れるべきなんだ。
 なんでもいい。どうやってもいい。
 俺を、俺を助けてくれた他人を傷つけても構わない。
 突き崩せ。突き放せ。

 そうすれば、そう。

 一瞬だけですむだろ。
 俺の痛みは、俺たちの痛みは。
 その一瞬さえ乗り越えれば、もう苦しむ事はないんだ。
 お互いがお互いを思って、苦しむ事だってなくなるんだ。

 そう思わないか。
 お前も、そう思うだろう。

 だから、許してくれよ。

 このチャンスに。

 俺たちが俺たちから解き放たれるこのチャンスに縋ってしまった、


 そんな俺の、愚かしさを。

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