揺れるトキ(4)  



「医学? 何でまた」
「うん」

 聞き返したリクの言葉に、マークは重々しく頷いた。

「知らん」
「おいっ!」
「ってのは冗談で」

 ひょい、と何かを横に置く仕草をして、こちらに向き直る。

「あいつの弟さ、今は平気だけど昔は体弱かったんだってさ。それで、ずっと見守る事しか出来なくて、悔しかった。だから、もうそういう思いはしたくない……らしい」

 へぇ、と小さく声を出して納得してから、ふと気が付く。

「ってか、なんでお前がそんな話知ってるんだよ」

 マークとユフィが話しているところは、あまり見た事がない。
 そういった事を言外に含ませながら聞くと、マークはにやりと笑って指を立てた。

「それはな」
「うん」
「ひ、み、つ、です」
「あ、そう」

 答えると、がくっとマークがこけた。

「何だよ、ここ突っ込まないのっ?」
「え、面倒臭い」
「ひどっ! 会話はキャッチボールだぞっ!」
「へぇ」
「リークー」
「だああ、抱きつくなっ!」

しっし、と犬を追い払うように手を振ると、いじけたような顔をされた。が、相手にする気がないのを悟ると、直ぐに立ち直る。

「ともかく、ユフィは医学」
「そだね」
「リクは?」
「……だから、」
「やっぱダメか」
「何がさ?」
「べっつにー」
「何だよ」
「大した事じゃないさ、気にするなって」
「何だよマーク、気になる」
「どうしても、気になる?」
「うん」
「ふふ、しょうがないわねぇ。それじゃあ、仕方ないわ。教えて、あ、げ、」
「やっぱいらん」

途中で言葉を遮って言うと、がくっと、再びこけてこちらを見上げた。

「ちょ、何だよ、盛り上がってたのにっ!」
「何かムカついた」
「えー、言わせろよっ!」
「いらんって」
「い、わ、せ、ろっ」
「そんなに言いたい?」
「うん」
「じゃあ、どうぞマーク君」

 言うと、マークはこほん、と咳払いをして見せた。

「君の進路決定に貢献してやったのだよ」


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