揺れるトキ(5)  



 マークに自慢げに言われて、思わず首を捻る。どこが。

「だってお前、ユフィのこと好きなんじゃないの?」
「……は?」
「あれ、違った?」
「違うよ、何言ってるんだよっ!」
「のわりに、赤くなってないか?」
「っさいな、お前が変な事言うからっ!」

 思わず怒鳴るようにして言うと、マークは耳を押さえるような仕草をしながらも、少し楽しそうな笑みを浮かべた。

「リク、お前気付いてないだろ」
「何が」
「女の中でユフィだけだろ、無碍に扱わないの」
「別に、そんなことない」
「ほーぉ?」
「というか、無碍に出来ないってのもあるけど」

 ぶつぶつと、視線を逸らしながら言うと、マークが驚いた顔をしたようだった。何だよ、と楽しそうに飛びついてくる。

「大したこっちゃない」
「えー?」
「信じてないな?」
「信じてないさ」
「でも、本当にたいした事じゃないって。兄貴が飼ってた猫をもらってくれた。それだけ」
「……で、無碍に出来ないと?」
「まあ」

 そうなるのか。

「リク、お前さぁ」

 呆れた声を出されて、いいんだよ、と言葉を遮る。

「今は、これでいいよ。他の事を考える余裕なんてないし、考えたくもない」
「後悔すんじゃねえの」
「かもね」

 笑って答えて、さて、と立ち上がる。
 ずっと屋根の上に居たせいで体が冷えてしまった。固まった身体をほぐすように軽く動かして、戻ろう、とマークを促すと、ああ、と彼も頷いた。
 そして、お前さ、と言葉を発する。

「俺、思うんだけどさ」
「何?」
「お前、実は馬鹿だろ」

 言われて、思わず笑った。そして、マークの方を振り返り、

「そうかもね」

 とだけ、答えた。

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