揺れるトキ(6)  



 最近は、リクも入ってくるのが早いからと、先に行くなよ、と言うジャンの言葉を無視して、大通りを小走りで走っていた。後ろから追いついてきたジャンに怒ったようにおい、と言われ、首だけを振り向かせて何、と聞きかえす。
 もちろん、足は止めない。

「お前さ、一応、護衛付いてるんだからな。分かってるのかよ?」
「分かってるって!」
「なら、俺らを、置いていくなっ」
「だからぁ、走ってないだろ? ジャンも追いつけてるじゃん」
「そりゃそうだけどなっ!」
「言うても無駄やでぇ、ジャン」

 いつの間にか足を止めてしまっていたらしいナギとジャンの元に、歩いて追いついてきたデュークが、少し笑いながらそう言ってきた。
 彼は確か西方の出身で、これもそちらの訛なのだそうだ。東北出身のナギとしては、何度聞いても耳に慣れる事はない。

「こういうアホな奴は、何度言うてもわからんもんや。一遍、痛い目でも見いへんことにはな」
「って、誰があほだっ!」
「ナギ、自分や、自分。他にこれほどのアホはおらんやろ」
「ひどっ! 俺、そこまでアホじゃねぇやいっ!」
「そういう奴がアホなんやでー。言われたくなけりゃぁ、自分、ちゃんと立場を考えるんやな」
「考えてるよっ! ただ、ちょぉっと早く帰りたいだけじゃないかっ!」

 そう言って、あ、早く帰らなくちゃっ!
 と声を上げて再び足を動かし始める。それを見た二人が、後でため息を吐いたようだった。

 けれど、実際そんなことはどうでも良い。

 大体、護衛をつけるなら自分よりもリクじゃないか。
 俺はまだ、適当に巻いて逃げる事も出来るだろうけど、リクは走るのが速いわけでもないし、ましてや喧嘩などもってのほか。
 まあ、それは自分がリクにやらせなかったせいもあるのだが、それはそれ、リクには手を汚して欲しくなかったわけで。
 ともかく、リクの方が危険だ。


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