揺れるトキ(7)  



 ホークスにもそう主張したのだが、それを聞いた彼は呆れたような顔をしてから小さくため息を吐き、あのな、と言ってきた。

「お前、分かってるのか。顔を覚えられているとしたらリクよりもナギ、お前だろ。それに、自分が怪我してるのも忘れたのか。せめてそれが治るまでは、大人しくしてろ」

 言われて、むっと唇をひん曲げる。

「でも、リクだって顔を覚えられたかもしんねぇじゃんかっ! 何かあったらどーすんだよっ! 何かあってからじゃ遅いんだぞっ! 分かってんのかよっ! っていうか、なんかあったら俺、怒るからなっ! 本当だからな、俺マジで怒るからなっ! そんでな、ここからさっさと出てってやるからなっ! おい、ホークス、聞いてんのかよっ! 大体な……っ!」
「……兄貴、うるさい」

 途中でリクに遮られて、思わず黙った。
 ちらり、と横を見ると、呆れた顔をしたリクと目が合う。
 思わずあう、と小さく声を上げた。

「だって、リクー」
「だって、じゃないだろ。俺よりも兄貴の方が危険だってのが道理じゃないか」
「そんなことどうでもいいよっ」
「……何が」
「ともかくリクだって危険はあるんだから、だからっ!」
「だから俺に護衛って?」
「そうだよっ!」
「兄貴にしては考えたね」
「だろっ?」
「けど、自分のこと考えてない」
「いいよ、別に、俺は平気」
「って言っている人が危険だって、さっきも言っただろっ」
「だけどぉ」
「だけどじゃないでしょっ! ってか、何回言わせれば気が済むんだよこの馬鹿兄っ!」
「あー、また馬鹿言った!」
「言われたくなきゃ、ちゃんと考えろっ! 周りを見ろ、自分のことも考えろっ!」
「か、考えてる、もん」
「どこが考えてるんだよっ?」

 怒鳴りつけるようにして言われて、うっと黙り込む。
 と、それまで黙してこちらを見守っていたホークスが

「あー、わかったわかった」

 と額を押さえながら首を振り、二人の言葉を遮った。
 そして、小さくため息を吐いて、それじゃあな、と言葉を続ける。

「リク、お前にも一週間だけ護衛を付けるぞ。登下校の間だけ、他に人がいない時に付かせることにする。ナギ、お前は怪我が治るまでの期間だ。それでいいだろ」

 疲れたように言われて、とりあえず分かったと返事はしたが、納得はしていない。
 俺よりもリクの方が危険だから、どうせならこっちよりも向こうに護衛をつける期間を長くするべきだ。
 そう思う。

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