未来への道(5)  



 一瞬だけ、びくりと体が反応しそうになるのを感じた。
 無理矢理に体を捻ってディズの手を振り解き、男のことを睨みつけながら、どういうことだよ、と聞く。乾いた唇の端に滲んだ血を舐めると、舌先の痺れるような鉄の味がした。

「僕は『矛』の元締めだ。ここを守る為に、『矛』を強く鋭く、保たなければならない。そう考える。だから、受け入れられない人間もいる。僕が元締めを継いだ時にやめさせた人間もいる。それはね、どこでも同じだろ。違うか。あいつも、『鷹目』でも不要な人間は捨てたいんじゃないのか」

 なるほど、と頭の中で小さく呟く。

「安心しろ」

 男が言葉を続けて、嘲るような笑みのまま俺を見下ろしてきた。少しだけ、吐き気を感じる。

「お前は餌になる。あいつは他の評価を気にするからな。正義感が強い、市民の味方。そういう像を作りたがってるんだろ。だから、餌になる。どうだ、違うか」

 言われて、さあね、とだけ答えた。声が掠れていたのは、先程殴られた影響だろう。
 俺の答えを聞いて満足したのかどうか。良く分からないが、男はふん、と鼻を鳴らすと行くぞ、と指示をして踵を返した。そして、扉を出る間際になって、再び俺の事を見る。

「妙な事を考えるなよ。お前は餌だ。黙ってここに座ってればいい」

 言い捨てて、今度こそ本当に扉が閉じた。
 光が押しやられて、部屋全体に暗闇が落ちる。
 最悪な気分だった。
 そこまで知っていて連れて来たのかと考えるのもあるが、それよりも、自分の考えが言い当てられた事が気持ちを悪くする。
 最悪だ、本当に。
 ゆっくりと身体を動かして立ち上がり、扉から離れると壁際にまで行き、寄りかかるようにしながら座り込んだ。そして、その状態のまま目を閉じてため息を吐く。


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