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愚者の思い(8) 「ホークス」 「ああ、どうした」 扉越しに呼びかけると、待っていたかのようにすぐに返事が返ってきた。入れよ、という言葉を待ってするりと中に入り込むと、しっかり扉を閉めて、あの、と声を上げる。 「リクは、『矛』のとこにいます。ナギも、そこに向かいやした。それで、その……」 俺のせいで、という言葉が言えなくて言いよどむと、暗い部屋の中いつものように足を組んで椅子に座っていたホークスがちらりとこちらを見上げて、目的は、と聞いてきた。 「条約の変更っす。直接だと不利になるから、取引の札にする為に」 答えると、そうか、と呟いた後に、更に何かを促すように沈黙を保つ。早くしないといけないのに、と思いはあるしそれは彼も分かっているはずなのに、ホークスは動こうとしない。何故だろう、と少し考えて、直ぐに思い当たった。俺のせいか。俺が、言ってくるのを待っているのだ。 なら、俺が言わないと、また同じ事が起こってしまうのか。 それでも、これを言う事で追い出されてしまうのではないかと一瞬だけ考えて、何を今更、と思い直した。 最初からそれを考えていたのではないか。今更何を言ったところで、変わるものじゃないし、どうせなら、あの二人の所にホークスが向かったのを確認した後で出て行こう。 そう腹をくくって、ホークス、と再び声を出した。 「俺のせいです。俺が、あいつらに話したから。……すいません、俺……」 何と説明しよう。何と言えばいいのか。多分、分かってもらえない。それでも、説明しなければいけない気がする。 だけど、何て言えば。 「ああ、分かった」 ふと、ホークスの声が上がったので驚いて顔を向けると、彼はこちらを見て唇の端を上げるようにして笑った。 「『矛』だな、良く知らせた。お前はここに残れ。ロイとデューク、どうせまだいるんだろう、あいつらを連れて行く」 「え、でも……」 出て行くつもりなのに。 流石にそれを言うのは憚られて、少し俯いて迷っていると、立ち上がったホークスがこちらに来てぽんと軽く、ジャンの肩を叩いた。 「直ぐに帰ってくる。いいな、どっか行こうとか考えるんじゃないぞ」 言い捨てて、ホークスが扉から出て行ったのが分かった。薄暗いランプを見て、思わず、唇の端をひん曲げるようにして笑う。 なんだか、馬鹿みたいだった。 本当に、俺は何をしていたのだろうか。 続 |
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