愚者の輪舞(2)  



 短い廊下から数段しかない階段を上りもう一つの扉を開いて、ホール、だろうか。かなり広い空間にでた。
 ここから見て丁度右斜め前方にある大きな扉の先が、外へと続く出口だろう。ただ、その前に、当然ながら『矛』の人々が行く手をふさいでいた。ここで取り囲んでしまった方が、一人ずつナギとぶつかるよりも勝てる確率が高いと考えたのだろう。
 実際そうだろう、と冷静に考えてちらりと前方にいる兄を見るが、その後ろ姿だけでは何を考えているのかは分からなかった。


「あのさ、俺ちょっと怒ってるんだよ。さっさと帰して欲しいんだけど」


 腕を組んで、苛々とそれでも少しつまらなそうにナギが言うと、人垣の中から一人、ディズとかいうあの喧嘩好きが進み出てきた。どうやら、この若くて良く言えば血気盛ん、普通に言えば喧嘩好きな人間の集まりの中ではリーダー的な存在になっているらしい。


 背が高く体格も良いディズが真ん中に進み出て、腕を組んでいるナギを見下ろすと、馬鹿にするような笑みを浮かべて見せた。
 そして、鼻をならして、だから、と聞いてくる。


「どけよデカブツ。その方が身の為だ」


 兄貴らしくない、冷たい声が部屋に響く。
 と、ディズを含めた男達がげらげらと笑い出した。そして。


「面白い」


 大きな口を左右に開いてねっとりとした笑いをみせてディズが言い、おい、と後ろにいる人々に声を掛けた。


「退け。俺が相手をする」


 少し弾んだ彼の声に周囲の男達が戸惑いを見せ、誰かが遠くから、しかし、と声を発する。


「文句は言わせん。俺の獲物だ」


 キッパリと言いきって、ディズがこちらに向き直り、そういうことだ、と言葉を続けた。


「俺に勝てば逃がしてやる」


 厭味な笑みを浮かべて言うディズに、そう、とナギが短く答えた。
 そして、大きく幅の広い鉈のような刀を持つディズを睨みながら、リク、と俺に声を掛けてくる。


「そこにいろよ、何もスンな」
「けど、」


 兄貴、と続けようとした俺を無視して、ナギが二本の短剣を引き抜いて、くるり、とそれを弄ぶかのように回した。
 右足を引いて、


「後悔すんなよっ」


 言いながら、まっすぐにディズへと突っ込んだ。

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