愚者の輪舞(3)  



 右腕を振り上げるようにして放った短剣は軽く出された刀に押され、直ぐに後ろに下がる。
 そのまま追いかけるように突き出された刀を右に跳躍して避けて、再び前方へ。左手を振り上げてディズの右手を狙うが、すっと後ろに下げられると同時に左足を軸にして放たれた回し蹴りをマトモに食らい、自ら跳躍しながらも吹き飛ばされた。
 右足で無理矢理に勢いを止めた後、こちらに突っ込んできたディズの横薙ぎをしゃがんで避けて、右手を付いて上方に蹴りを放ち刀の手元を直撃する。
 硬い感覚にいったか、と思うがディズは顔を顰めただけで、勢い良く刀を振り回すようにそれを払いのける。右手を使って後転し、立ち直った。
 眉を顰めながらちぇと舌打ちするディズを見て、リクの場所を確認し、再びディズの方に向き直る。


「甘いな、つまらん」


 呆れたような、というのが一番近いのだろうか。
 そんな声で言うディズに、ナギは思わず顔を顰めた。


「何のことだよ」
「お前の事だ。これだから、嫌いなんだ」


 大きく刀を振りながら突っ込んできたディズから横に跳躍して逃れ、軽く叩いたブーツであいた脇腹を軽く薙ぐように蹴りを放つが、後ろに下げた左腕に防がれて、思わずそのまま後方へと跳躍。


「『鷹目』の奴らはっ」


 それを直ぐに追いかけてきた刀を、短剣をクロスさせる事で防ぐが、そのまま力押しされると同時に再び蹴りを入れられて、後ろに吹き飛びそのまま倒れる。
 石畳の床に背中をしたたかに打ちつけ、息が詰まった。激しく咳き込んで、兄貴、と遠くから聞こえた声に反応して目を開けると同時に横へと転がり突き降ろされた刀を避ける。急いで起き上がり、再び横から襲ってきた刀を短剣で受け流すようにして、後方へ跳躍、痺れる左腕を軽く振りながら、右足を下げて、どうにか体勢を戻す。
 背中が痛い。一応受身は取れたらしいが、体を動かそうとする度に鈍く重い痛みが走った。
 くそっと小さく毒づいて、兄貴、と言いながらこちらに来ようとするリクを視線で制する。一瞬驚いた顔をしたものの、大人しく引き下がってくれた弟に感謝して、再び、ディズの方を見た。先ほど左腕に当たった仕込み刀は、そこまで深くはなかったらしい。何事も無かったかのように刀を持つディズを見て、小さく舌打をする。


 引いた右足にぐっと力を入れて、再びディズの方へと急接近。しゃがみ込むようにして下から上へと放った短剣は再び刀に防がれて、今度は蹴りを受けないように一度後方へと跳躍。直ぐに振るわれた刀を必死で足を動かして避け、連続して突き出された刀を右に動いて避けようとした時、金属のぶつかる小さな音が耳元で響いた。
 思わず後ろを振り返って、イヤリングが途中で切れて後方に吹き飛ばされたのを見る。


 それを見て、一瞬だけ逡巡した。


 イヤリングを取ろうと条件反射的に動いてしまったせいで、動きが鈍る。どうせなら、取りに行ってしまった方がよかったのかもしれない。その場に踏み止まることを選んだせいでか、振り下ろされた刀を避けきれずに、
「……ぃっ」
 刀を右肩に受けた。

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