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愚者の輪舞(5) 一気に息を吐いて前方に跳躍し、右肩を後ろにしたまま左手の短剣を横薙ぎに振るが、簡単に防がれた。すぐに体を引いて左足を軸に蹴りを放ったところを、ディズはあえて逃れるだけで刀を向けず、ナギの後ろに回って思いきり背中を蹴りつける。 前方に倒れかけて、膝が立たずに倒れこみ、左腕をついてなんとか体を保つ。腕をついたまま体を反転させて、突き下ろされてきた刀を短剣で防ごうとしたが、それで防げるものではなかった。短剣を掠って落とされてきた刀が、脇腹を貫く。 「つまらんな、本当に」 言いながら刀を抜いて、ディズはナギの事を見下ろした。 「甘いんだよ、あんたらは。昔っからそうだった。俺が幾ら主張しても、あんたらは安全を求めた、平和を求めた。だから、何も変わらないし変われないんだ。本当に、馬鹿らしいぐらいに」 言って、死にな、と刀を振り下ろそうとして。 「……っ?」 後ろから、思いっきり殴られた。 頭がぐらぐらと揺れるのを抑えて、目を開くと、黒髪のガキの方が、使い方も知らないだろう昆を、こちらに向けて来ていた。 下らない、と思う。俺達のような世界を知らないガキが。自分の何かを掛けて、命を掛けて何をすることもできないガキ。守られる事しかないガキが、俺に、逆らおうとしているのだ。本当に、クダラナイ。非力なくせに誰かを守ろうとする、それが俺をいらだたせる。俺は変化を求めた。その為にはなにを無くしても、何を壊してしまっても、イイと思っていた。今でも思っている。だから、平穏で安全な世界を求める『鷹目』が嫌いだったのだ。あそこにいた時も、そう。そして『矛』の豚に取り入った今も、そうだ。だから。 「この、糞ガキが……っ!」 血まみれで倒れたままの、放置しておけば出血多量で死んでしまいそうなガキの側に膝立ちになって、震える両手で昆を握ったガキに向かって足を踏みこむ。遠慮はしない。真上から、両断するように刀を落とそうとして、 「――っ」 腹部に、強烈な痛みを感じた。後ろに下がりガキを見て、納得する。長めの昆の端を床につけてこちらに対して斜めに突き出したのだ。ぎりぎりまで引きつけてからそうやって突き出せば、自らの力の有無に関わらず、開いての勢いに合わせた打撃を加える事が出来る。 しかし、二度目は通用しない。 それはガキの方も分かっているのだろう。反応の無い兄のことを片手で確認しながら、あんた、と声を掛けてきた。少しでも時間を稼ごうと、そう思っているのか。 「いいのかよ、俺達に手ぇ出して。俺ら、取引の材料なんだろ。折角の材料無くしてどうするのさ、それに、俺達殺しちゃったら、ホークスだって……」 「ああ、黙っちゃいないだろうさ」 言って、にやりと笑う。ディズの言葉にリクは一瞬目を見開いて、その真意を推し量るかのようにこちらの事を見てくる。 「いいじゃないか、戦争大歓迎。何も無いんだよ、このままじゃ。何も変わらない。うんざりなんだ、この状況は。だから、お前等を殺して戦争になるなら、それで何か変わるなら、大歓迎さ。なあ、そうだろ」 そう言って周囲に同意を求めると、男達はそうだそうだと頷いた。 なるほど、と思う。 元締めが変わったばかりだと言う『矛』。その時に合わせてこいつらが、『矛』を支配したのか。これが、先ほどの違和感。リーダーであるはずなのにそうでなかった、あの男に対する違和感だ。 しかし、納得できた所で好転はない。むしろ、状況の悪さを確認できただけ。 なら、どうする? 「死にな」 続 |
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