プレゼント  

冬の乾燥した街並みの中を、二人の男女が歩いていた。年は、若い。二人とも紺色の形の違う服を着ていることから、学生らしい事が分かる。
「ああ、これじゃあ肌がカサカサになっちゃうよぉ……」
「って、肌かよ、気になるのは」
 なんとなしに呟いた彼女の言葉に、彼が振りかえりつつ聞いた。彼女は、少し怒ったような顔をして
「当たり前でしょう?別に自分が可愛いとか思った事はないけどさ、肌までカサカサになったら天国のおばあ様に悪いもん」
 と言った。彼女の祖母は元モデルだったそうで、彼女はいつもそれを気にしている。
「まあ、そうだな」
「……ちょっとぉ。彼氏だったら、ちょっとは可愛いよとか言ってよねぇ」
 即答した彼に、彼女はぷうっと頬を膨らませてきた。冷たい風に当たって、赤く色づいている。彼はにやりと笑った。
「へえ、そういうの言って欲しいわけ?」
「……っ!あのねーっ!」
 本気で怒ったようになって彼に顔を向けた彼女の目の前に、はらりと白いものが落ちてきた。一つだけではなく、いくつも、いくつも落ちてくる。
 彼女はハッとして、すでに彼が顔を向けている鉛色の空を見上げた。いくつもの白いものが円を描くようにして空から落ちてくる。
 それに向かってそっと手を伸ばし
「雪だ……」
 と彼女は小さく呟いた。
「通りで寒いわけだ」
 紺色の服の上から腕をさすりつつ、現実的な事を彼が呟いた。それを聞き流して、彼女が少し嬉しそうに空を見上げてくるりと回る。膝丈よりも少し短いスカートがふわりと浮いて、彼女の動きと合わせて回った。その動きがゆっくりと収まると、彼女はニッコリと笑って彼の事を見上げた。
 彼が小さく笑って、ほいっと無造作に小さな箱を渡す。可愛くリボンがつけられていたそれを両手で受け取る彼女。
「誕生日、おめでとう」
 素っ気なく言った彼の言葉に、彼女は極上の笑みを返した。
「ありがとっ」



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