ホワイト・クリスマス?  

長いマフラーと黒い髪をなびかせるようにして、彼女は飛ぶようにして彼に追いついた。そして、その腕にすがりつく。
「おっはよーっ!」
 にこにこっと笑って言ってくる彼女を見て、彼は少し不思議そうな顔をしながらもおはようと返した。学生服の上から着ている紺色のコートが、ふわふわとした彼女の頬をくすぐる。彼は、そのまま言葉を続けた。
「どーしたんだよ、機嫌いいじゃん」
 かなり不思議そうに聞いてくる彼は、かなり現実的で大人な性格である。
「だってさー、雪だよっ!雪、ゆき、ユキ!」
「んな、言わなくてもわかるっての」
 はしゃいで言ってくる彼女に呆れて、彼は辺りを見まわした。真っ白な雪が薄くあたりに積もって、見ているだけで寒々しい。この会話で吐き出される息も白い雲のようになって、空へと上っていく。
 やはり彼にはAはしゃぐ理由がわからない。彼にとって雪は、ただ周りを寒々しくするものでしかないのか。
「わかってないよーっ!ホワイト・クリスマスだよっ!白だよ、白っ!」
 さすがに彼の鈍さには、はしゃいでいた彼女も少しむっとした。ロマンチックとか、雰囲気作りとか……そのような言葉は彼には存在しないのか。
「そりゃあ、見りゃ分かる……」
「分かってないーっ!こんな事、滅多にないんだからねーっ!」
 彼の言葉を遮って、彼女は言った。まあ確かに、この地域で雪が降るというのは、珍しいことかもしれない。
 怒ったように彼を見る彼女に苦笑して、彼は少し彼女を急かした。
「ほれ、遅刻するぞ」
 そう言いながらも、自分は軽い調子で走り出す。彼女は慌てて彼の腕をつかみ直しながらも
「待ってよーっ!」
 と、彼の後を追いかけていった。
 ホワイト・クリスマス。彼女にとっては珍しい冬の一日。彼にとっても……ーーー。
 少し離れた学校から、明るい、鐘の音が響いてきた。
 メリー・クリスマス。



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