にゅーふぇいす  

 春になると綺麗な桜並木が見え、新入生たちがこの学校にもやって来る。少し不安そうな顔で、でも期待に胸を膨らませながらやって来る新入生の顔も、彼らの為に様々な工夫を凝らす在校生の顔も、私は好きだ。
 戸惑いながらも入ってくる新入生たちを、上から眺める。彼らはこれから、様々な人と会い、様々な経験をして、知らないことを知っていく事になるのだろう。思っていたのと全く違う出来事が起こるかもしれない。
 だが、それは誰もが経験することだ。

 私は手助けをすることはできないが、見守ってやることはできる。それは、長年この学校に住む私の役目だと、勝手ながらに思っている。

 この学校に長年住む私が一番好きなのは、昼休みや放課後といった、学生たちが最も活気溢れる時間帯だ。学外の活動は流石に見たことは無いが、教室内で歌やダンスの練習をしているのをみていると、自分まで若返ったような気分になれる。彼らの会話は私に分からないことも多いけれど、とても楽しめるものだ。

 学生たちの生活は、見ていて面白い。

 ある学生は勉強そっちのけで部活動に励み、終には何か私には良く分からなかったけれど、賞をもらえたのだと友人たちに話していた。其の時の学生の様子は大変嬉しそうで、今はもう卒業してしまい立派な社会人になっていると思うが、きっと彼の人生の中では大きな支えになっていることだろう。
 またある学生は、サークルの先輩に恋をしていた。その先輩は既に彼女持ちで自分の気持ちが届かないことを知りながらも、告白をして、最後には笑顔を浮かべていた。今彼女がどうしているのかは知らないが、きっと、幸せな人生を送っていることだろう。
 別の学生はほとんど学校には来ないでバイトにばかり勢を出し、とうとう留年してしまった。
 学生時代から、妙に研究に打ち込んでいる子も居た。その子はいつも目を輝かせて講義に出ていたし、教授とも仲が良かった。いつの間にか大学院にも入っていて、気が付いたら、教授になって帰ってきた。その人は今、楽しそうに学生に講義をしている。

 いいこともあれば、悲しいこともある。私が見てきた中でも、当然、ココが嫌になって出て行ってしまった生徒や、友人と喧嘩別れをしてしまった生徒、他にも様々なことが原因で哀しい思いをし、出て行った生徒がいる。しかし、それでも私は、学校での生活はいいものだと思っている。この学校に思いを残し去っていった彼らの事は、私が、しっかりと覚えてるのだ。
 今、生徒たちは新入生の勧誘を行っている。様々なサークルがメインストリートに繰り出して、チラシを配り、声を張り上げて新入生を誘っている。この部活がいいよ、うちのサークルはどうですか、と。何度もこの光景を見ている私にとっては、春の風物詩だとおもいえる。
 彼らは、一体どのような学生生活を送るのだろう、と私は思いを馳せる。言葉を発して応援することはできなくても、私は、彼らを見守っていこうと思う。辛いことも楽しいことも、嫌なことも嬉しいことも全て享受して、ここでの生活を送っていくのだろう。


 私という古い学び舎から出て行った、彼らの先輩たちと同じように。



当サイト内の文章・画像の無断転載・使用を禁止します

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送