竪琴弾きと春-1-  

 暗かった。
 暗くて狭くて、息が詰まりそうだった。


 足を抱えて身体を丸めて、できるだけ小さくなって耳を塞ぐ。遠くから聞こえる悲鳴や歎きが聞こえないように。あの現実から少しでも引き離してくれるように、耳を塞ぐ。
 お願いします、と誰かが懇願している。
 タスケテクダサイ、と悲鳴を上げる人もいた。


 クローゼットの中。


 自分が、何故そこに居たのかは覚えていない。
 それでも、そこから出ることはならなかった。
 死にたくなかったのだ。
 だから、うずくまってそこに隠れていた。


 何から?


 人間だ。
 銃を持った、怖い人たち。
 わたし達を殺そうとした人たち。
 わたし達を殺した人たち。


 ぱん、と長い発砲音がして――。


 わたしが、ころされた。



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