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竪琴弾きと春-15-
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チガウヨ。
最初、それが何なのか分からなかった。
――振り返らないで。
と続いた言葉でようやく、それが少女のものであったのだと理解する。驚き、しゃべれるようになったのか、と声を掛けようとしたところで、ねえ、と声を掛けられて口を閉じた。
「私は、楽しかったよ。あの小屋で、二人で過ごしてた時間、すごく好きだった。だから……」
背中にそっと、少女の暖かい手が触れるのが分かった。
それから、とん、と少女の額が、僕の背中に触れる。
振り返ろうとすれば、こっち見ないで、と少女に厳しい声を投げられた。
だから、とその状態のまま、少女が言葉を続ける。
「春が来ても、戦争が終わったとしても、ここに住もうよ。一緒に、ここに居よう?」
少女の言葉に、僕は目を伏せた。
そして、ソレはムリだよ、と言葉を紡ぐ。
ぴくりと、少女の手が震えた。
「俺は、君とは居られないから」
ごめん、と微笑みながら続け、振り返る。
泣きそうな顔をした少女と目が合って、そっか、と微笑まれた。
わかった、と少女の口が動く。
「ばいばい」
言うと同時に、
ぱん、と長い発砲音がして――。
僕は、ころされた。
え、と小さく声を上げる間もなく、転落していくのが分かった。体が木にぶつかって、骨が折れて、どうしようもなく壊れていくのを感じる。
振り返らないでって言っていたのに、と心の中で呟く。
振り返ってはいけない、と僕は彼女に言った。
少女も、振り返ってはいけないといった。
振り返れば、どうなるか知っていたから。
だから、振り返った。
僕は――。
彼女を慰めようと伸ばした僕の手が、何の役目も果たさずに、地面におちた。
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