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天使な悪魔
あるところに、すっごくやさしい性格をした子悪魔がいました。
4分の3が悪魔で、4分の1が天使なのです。見かけは完璧な悪魔なのですが、真っ赤なほっぺたといい、つぶらな瞳といい、そこのところは天使そのものでした。
そんな子悪魔はいつも、親切心からイロイロな事をするのですが、いつもそれは裏目に出てばかりいます。
例えば、こんな事……。
雲の上でぷかぷか下界を眺めていた子悪魔は、人がカギをかけているのを見てこう思いました。
「家のカギをかけたら、家に入りにくくなっちゃうよね。そうだ、カギを外しといてあげようっ!きっと、みんな喜ぶぞぉ」
子悪魔は親切心から、留守になっていたある一軒の家のカギを外しました。
するとそこへ、たまたま通り掛った乞食さんがいました。
その乞食さんは黒い髪をたらしていて、髭は伸びっぱなし。見ていて、とチても可哀想になってしまう子悪魔でした。
乞食さんは少し辺りを見まわしてからなれた手つきでカギを外そうとしました。
しかし、その家は子悪魔がカギを外していたところ。
乞食さんはカギが開いているのに驚きながらもすっとその家の中に入っていきました。
家の中を物色……ではなく、見て回って、乞食さんはいくつかのものを盗み……記念にとって行きました。
それはとっても高いものなので、乞食さんはおいしいご飯を食べる事ができました。
それを最後まで見届けた子悪魔はこう思いました。
「うわあ、やっぱりカギはない方がいいんだな。だって、アノ人すっごく嬉しそうだったもん」
純粋な心を持った子悪魔には、泥棒という言葉が存在しないようでした。
家に帰ってきた家主の人が、カギが外されていて、金目のものがなくなっているのに悲鳴を上げました。
子悪魔は、不思議そうな顔をしながらぷかぷかと浮かぶ雲の上からそれを眺めていました。
サイレンの音がして、黒と白に塗り分けられた車がきました。
子悪魔は不思議そうに、ぷかぷかとそれを見ていました。
そして、やっと気がつきました。
家主さんは困っているのだと気がつきました。けど、先程のものを乞食さんから取ったら、乞食さんが困ってしまうなっと思いました。
子悪魔は困った顔をしてぷかぷかと雲の上から空を眺めていました。
ぷかぷかと浮かんだ雲は動きませんでした。浮かんだまま、困った顔をする子悪魔のことを見守っていました。
ぷかぷか、ぷかぷかと雲は浮かんでいました。天使な悪魔は、困ったような顔のまま、ずっと下を見ていました。ぷかぷか、ぷかぷかと。
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