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ホワイト・デー
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「ほれ」
いいながら小さな包みに入れたそれを渡すと、彼女は不思議そうに首を捻って彼の事を見た。
もしや、わからないのか。今日が何の日か。
いや確かに今年のバレンタインもなんか良く分からないもの渡されたし、彼女の兄(次男)からはマトモなチョコをもらえるまでは返さなくていいよとも言われていた。だからずっと渡してこなかったし。
でも、さすがに罪悪感が出てきて、だからあげたのだが。
「なあに、これ?」
聞いてきたのは、他でもない彼女。
小さな包みを開けて良いのかダメなのか、判断に困っているといった表情でこちらをみる。そして、包みを見る。外から包みの中身が透視できるかのように、目を細めてみる。
でも、見えない。
当然だ。
「何って、プレゼント」
あえて、はっきりとした回答を避けてみた。
「私、誕生日じゃないよ?」
「知ってる」
「クリスマスじゃないよね?」
「違うな」
「ひな祭りは終わったよ?」
「それ以前になんかやる日じゃないな」
「七夕はもっと後?」
「聞くなよそこを」
「五月五日は」
「端午の節句」
「良い国作ろう」
「鎌倉幕府……じゃなくてっ!」
いやむしろネタ古いけど。
思わず途中で遮って彼が声を上げると、彼女は更に訳が分からないという顔をして彼を見た。
「ホワイト・デー。あげたこと、無かったし。三回分」
そういうと、彼女はようやく納得した顔をして、でも、とすぐに目を伏せた。
「私、マトモなチョコあげたこと無いよ?」
それは、確かに。
何故か焦げていたり、花束だったり、良く分からない物体だったりするのがいつもだし、それ以前に何をどうしたらチョコがそんな物質になるのか。
でも。
「いくらなんでも、ずっと何も返さないのは気分悪いから」
そういって、開けてみろよ、と促す。
すると彼女は、やはりプレゼントは嬉しいからか、うきうきと包みを開けて。
「チョコ?」
「うん」
「普通の?」
「奇を衒ってどうする」
まじまじとそのチョコを見詰めて、二つ入りだったそれの片方を彼に渡すと、ぱくり、とそれを食べた。
「チョコだぁ」
「当たり前だ」
答えて、もらった方のチョコを食べる。
やっぱり、チョコは甘い。そう思った。
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