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竪琴弾きと春-4-
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小屋に戻って、今度は冬篭りの準備の続きだ。以前の経験から、少女もきちんとこの作業を手伝ってくれる。といっても、乾燥させる木の実や山菜を並べ、日の光に当てるだけだ。そんなに難しいことはない。だが、何も知らなかった最初の時に比べれば、少女はかなり動けるようになった。
数日かけて乾燥させた食料は、それなりの分量にはなったが、やはり一冬越えるには足りない。それに、少女の為に新しい服を幾らか準備しておかなければ、寒いだろう。身長も少しは伸びたようだし、僕と違って凍えそうな寒さの中で耐えるような経験は……僕と過ごした最初の冬ぐらいしかなかったはずだ。
非常に寒い思いをして何とか乗り換えた冬のことは、今でも鮮明に覚えている。
ひとつは、軍隊にいた時の事。戦争が恐ろしく悪化していた時のことで、半年前に仲間に聞いた話では現在の状況はかなりマシになってきたという事だが、あの時の戦争はひどかった。いつ敵兵が来るとも知れない極限状態の中で、仲間たちと寒さに震えながら銃を構え、敵を待った。そして、撃った。撃って撃って撃ち続けた。
銃を乱射し続けると、その振動と音が僕の頭の中で反響していた。これが世界の終わりまで続いていて、また世界を構成しているのもこれなのだ、と思っていた。僕がいるところを中心に、世界の全てが憎しみと争いと報復で満ちていて、それ以外には何もないのだろう、と。
そしてもうひとつが、少女とこの山小屋で過ごした最初の冬のこと。前の町で買った食糧と、服と毛布はあった。しかし、薪が非常に少なく、また食料も途中で尽きた。だから、兵をしている時に学んだように、木の皮などをとって来て食料の代わりとした。
僕よりも、彼女にとってつらい冬だったように思う。けれど、この冬を二人乗り越えたおかげで、お互いのことを信頼しあうことができるようになったのだ。それまで、少女は僕に懐いてはいたけれど、それだけだった。信頼しているのではなく、ただ他に人がいなかったから僕についてきたのだ。それだけの関係だった。
作業があらかた終わると、少女と二人で一休みする。
少女はカーテンで区切った自分の部屋から、僕のためにと町から買ってきたのに何故か少女のものとなってしまった裁縫道具を持ってきて、居間として使っている部屋のど真ん中に座り込み、敗れた服を直したり、もう直せない服を使ってカーテンやら掛け布団やらを作り始めるのだ。そして、僕は居間から物置にしてある暗い部屋を通り、自分の部屋に置いてある棚の中からすでに何度も読んだ聖書や新聞・本を適当に持ってきて、居間で読む。
これが、二人の休憩の時間だった。穏やかで静かなこの時間が、僕が、そしてたぶん彼女も、もっとも愛した時間であった。
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