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珍しく遅く帰ってきたリクにそのことを話すと、リクはちょっと驚いたように目を瞬かせた。
湯浴みして濡れた髪を拭いていた手が止まって、え、と声を声を漏らす。
「ホークス、他に何も言わなかったの?」
「言ってねーよ? ……笑ってたけど」
むぅっと膨れながら言うと、リクはいつものように苦笑することはせず、そう、と呟いて少し俯いた。ベッドの上に座り込んだまま、何かを考える時のクセだけれど、じっとシーツの一点を見つめる。
「リーク、どうしたんだよ?」
聞くと、リクはゆっくりと瞬きを数度繰り返してから、軽く首を振った。
「なんでもない。俺の勘違いだったみたい」
「また、ホークスが何かすると思った?」
適当にあたりをつけて聞くと、リクは苦笑して答えた。
アタリ、ということだ。
「兄貴を囮とするのにさ、第一身分の知り合いが必要みたいだから。学園に来させたのは、誰か丁度いい存在をつくりたかったのかな、って思ったんだ」
「ん、んー? もう一人、囮が必要ってことか?」
「いや、なんていうのかな。被害者全員に第一身分の知り合いがいたなら、兄貴が囮となるためには、第一身分の知り合いが必要になる。学園に行ってるとはいえ、俺じゃ役不足だし……それで、誰かを巻き込みたがってるのかと、思った」
「……危険なのか?」
「その人達が生きてるなら、大丈夫じゃないのかな」
答えて、「でも」と言葉を続けるリクの表情は、よく見えなかった。
「巻き込みたくないし」
呟くように言ったリクの言葉に苦笑して、「そうだな」と同意する。
それから、リクの後に飛び乗って、タオルの上からがしがしと頭を撫でた。
「うわ、何すんのさっ」
「まあまあ、いーじゃんいーじゃん」
「何がっ?」
慌てたようなリクの反応に笑って答えて、大丈夫だよ、と声をかける。
「シリルはリクの友達なんだろ。俺が何とかするから、大丈夫。困らせたりしないよ」
言うと、俺の手から逃れようと抵抗していたリクが、ぴたりと動きを止めた。
そして、少し俯き……頷く。
「……お願い」
「任せとけって。俺、リクの兄ちゃんだし? それぐらい、何とかしてやるよ」
自信たっぷりに言った俺の言葉に、リクは苦笑したらしい。
「何それ?」といわれて、「そのまんまの意味だよ」と言って笑う。
「大丈夫だから」
もう一度繰り返してリクの頭を軽く叩くと、リクは苦笑したまま、小さく頷いた。
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