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今日の懺悔は、一人の少年だった。
シリル・ド・カートという名の少年は、言うまでも無く、第二身分で特に王の近くに居ることを許されている貴族のご子息だ。
毎週、熱心に教会に通ってくる少年ではあったが、こうやって懺悔しに来るのは初めてだった。
彼はいつものように懺悔室に一人入り、小さな窓を開けた。
姿は見えないが、その先にいる少年の姿は、容易に想像される。
「……いかがなされましたか」
聞くと、少年は一気に喋りだした。
学園に来る一人の少女のこと。
その少女に恋をしたこと。
同級生である、少女の弟との確執のこと。
そして、少女に今後会うことを断られたこと。
それでも諦められず、諦めきれず。
どうしたらいいのか分からなくて、惑っていること。
惑わされていること。
他教徒の、汚らわしい存在に。
光に溢れた少年の未来が、その少女の悪意無き穢れによって壊されていくのが、見えた。
「僕は、どうしたらいいでしょう」
少年の声が聞こえる。
答えは簡単だ。
分かりきっている。
見えすぎてどうしようもないぐらい、見えすいた答えを。
だが、彼はそれを掲示しない。
行うのは彼自身。
それを、少年が知る必要はなかった。
だから、一つ伝えた。
その弟と少女を、懇親会にでも誘いなさい。
貴方の家で、夕方に行われるであろう、それに。
そうすれば、後は神が
私が神の力を借りて、
全てを解決してくれるでしょう。
終わらせて差し上げましょう。
彼がそういうと、少年は、大きく頷いた。
純粋な心で、頷いた。
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