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「あー。そういうわけでだね、リク君。ちょっと僕も色々思うところがあって、懇親会とか開いてみようかなと思っているんだよ」
「……はぁ」
 せわしなく手をポケットから出したりしまったり、きょろきょろしながら言うシリルに、曖昧に頷く。
 こう言うのも嫌だが、兄貴がシリルをフって、一週間。
 その間、シリルはかなり落ち込んでいたらしく、何か嫌味を言ってくるどころか、リクがそこにいることすら気付かない様子だった。
 他の生徒達も、どうしたのかと思うほどの意気消沈っぷりで、これはこれでかわいそうだ、と思っていた矢先だった。
 突然目の前にやって来たと思ったら、コレである。
「ほら、学生同士仲良くしないといけないだろう?」
「それはさっき聞いたけど」
 突っ込むと、シリルはうっと言葉に詰まった。
 そして、ともかく、といいながらバシンと机を叩き……痛かったのか、少し黙り込んだ。
「大丈夫?」
「へ、平気に決まってるだろっ!」
 真っ赤になって怒鳴ってから、その事に気付いたかのように、ごめん、と小さな声で呟く。
「……別にいいけど。それで、本題は?」
 聞くと、シリルは再び躊躇した後に、うぅっと一つ唸った。
「……懇親会にだな、その、君と、ナ、ナギさんを、だな」
「ああ……誘ってみてもいいけど……」
 来るとは限らないけど、と言葉を続けようとする前に、ぱっと表情を明るくしたシリルが
「本当かっ」
 と食いついてきたので、小さく頷いた。
「よかった。ありがとうリク君、感謝するっ!」
「いや、でも、行けるかどうかは……分からないよ?」
「ああ、大丈夫、わかってるっ」
 慌てて付け加えた言葉に、嬉々として答えるシリル。
 本当にわかっているのだろうか。分かっていない気がする。
 むしろ、ちゃんと聞いていないような。どうしよう。
 ものすっごく嬉しそうなシリルの対応に困っていると、どん、と背中を叩かれた。
「なぁなぁ、何の話してんだよ?」
「……痛いんだけど」
「あ? 悪い悪い、リクちゃん、怒らないでぇー」
「う、ざ、い」
 甘えるような声を出すマークを押しのけて、ため息を吐くと、笑われた。
「んで、何の話してんの?」
「ああ、君も来てくれてもいいぞ。今度、懇親会を開こうと思ってな、リク君も誘っていたところだ」
 立ち直ったらしいシリルがそう答えると、マークは驚いたように目を瞬かせた。
 そして、いつさ、と聞き、それが明日であることが分かると、「ダメだダメだ」と首を振った。
「俺、用事あるわ」
「そうか。それは残念だな」
 全く残念聞こえない声で言うシリルに、そうだ、とマークがこれまた全く気にしていない声音で言葉を続ける。
「ユフィなら空いてるんじゃね? リク、行くんだろ?」
「え、いや……どうだろ」
 戸惑いながら答えると、腕を頭に回されて、いいから、と囁かれる。
「一緒に行けよ。ナギさん狙いとはいえ、敵を減らせるチャンスだぜ?」
「俺だけじゃ決められないんだってば。聞いてみないと」
「……ま、そりゃそうか」
 小さく呟いて、でも、としつこく言葉を続ける。
「ユフィが居れば、行くかもしれねーよな?」
「だから、そんなの、わかんないってばっ」
「おし。じゃあシリル、ユフィ誘っとけよー」
「全く人の話聞いてないね」
「聞いてる聞いてる」
「聞いて無いじゃん……」
 リクがため息を吐くと、マークは楽しそうに笑った。
 その様子を眺めていたシリルに
「結局、ユフィリア君も誘うのか?」
 と聞かれ……迷った末に、頷いた。

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